今回は、あなたが実家を相続した(相続する予定)場合に色々と考えることについてまとめることにしました。
実家の処分についてどうすればいいのか、まだ迷っている方や売却を検討しているが、売却後の相続税が気になっている方に読んでいただけると嬉しいです。
目次
実家を相続すると考えることについて
実家を売却する理由は様々
不動産を売却するにも様々な形があると思います。
大きく以下の2つに分けて解説してみます。
1.問題解決のための売却
ここで取り上げたいのは、不動産を所有することで発生する様々な問題を解決するために売却をすることがあるということです。
将来的に誰も住む予定がないことで、空家はすぐに劣化してしまいます。長期間放置することで、家屋の倒壊などで近隣に迷惑をかける心配が発生します。
また、庭などがある場合は、雑草が生え放題になり、害虫などが多く生息してご近所に迷惑をかけることになります。
長年放置していると、ここは誰もいないということがわかってしまい、犯罪者が身を隠すことに利用する可能性があります。
経済的な面では、固定資産税をずっと払い続けなければいけません。毎年無駄なお金が消えていくことになります。
これらの問題を解決するために売却をするということも十分考えられることだと思います。
2.将来の投資のための売却
こちらは、先程とは違って、将来あなたが何かを始めるために、売ったお金を投資することが目的で売却をする内容になります。
例えば、子供の進学に必要な学費に充てるためであったり、あなたが会社を辞めて事業を興すための開業資金に当てるためであったり、持ち家を購入するための自己資金であったり、老後に夫婦で旅行に行くとか将来自分たちが介護施設に入居することを想定して、その資金に当てるとか将来飛躍するために使うことが目的で売却をするというものです。
人それぞれに使う目的は違うと思いますが、こちらの場合は目的がハッキリしています。
実家を賃貸にする
誰も住む予定が無くて、売るつもりもない場合は、賃貸にして少しでも収入の足しにしたいと考える方もいると思います。
1.リフォームしてから賃貸する
やはり、人に有償で借りてもらうからには、少しでも綺麗にしたほうが借り手がつきやすいです。水回りやお部屋等のリフォームは最低限必要になると思います。
しかし、結構な費用が必要になることは想像しておく必要があります。思わぬ出費で当初の計画が狂わないように十分な計画を立てて臨んでください。再三が取れるかどうか素人にはわからないことも沢山あると思います。失敗しないように、不動産会社の専門的な意見も取り入れて、賃貸は検討することをオススメします。
2.リフォームせずに賃貸する
リフォームせずに、現状のままで賃貸をする場合は、多少相場よりも賃料は安くしないと借り手が付かないことがあるので、専門業者によく相談して話を進めていく必要があります。
今現在見えていない諸問題も、今後色々と起きることは初めから想定しておいて欲しいと思います。
付帯設備の不備であるとか、雨漏りなどのクレーム、家賃の滞納など賃貸で起きる様々な問題についてです。
しっかりと勉強してから賃貸にすることを検討しましょう。
実家に引っ越す
今現在あなたがお住まいの家から実家に引っ越すというものです。
1.自宅を売却する(持ち家の場合)
あなたが持ち家にお住まいなのであれば、自宅を売却してから実家に引っ越すことも考えられることです。売却後にローンの残債が全て払い終わることが可能かどうかで結果が分かれてしまいます。
ローンが残るようなら売却は無理ですし、そうなると実家を売却するか賃貸にするか、しばらく保有して様子を見るかを決めないといけないです。
実家を売却すると気になる相続税
1.譲渡損失が出た場合
実家を売却した時に、購入価格よりも低く売れた場合は譲渡損失が出ることになるので、税制の特例が適用できるようになります。
もちろん損が出たのでこの場合は所得税と住民税はかからないことになります。
その場合、売ったその年の他の所得と相殺して、所得税や住民税が軽減することができます。これを「損益通算」といいます。
更に売った年の所得よりも譲渡損失の方が大きくて相殺しきれない場合は、翌年以降の所得からも繰り越して差し引ける「繰越控除」が利用できる場合があります。
これが「譲渡損失の繰越控除」と呼ばれている特例となります。この特例は売った年の翌年から最長で3年間の所得まで繰越控除できるので、売った年と合わせて最長で4年間所得税と住民税がゼロになったり軽減されたりするのです。
2.譲渡利益が出た場合
これはよく聞かれる質問ですが、税金が発生するのはあくまでも購入時よりも高く売れた場合のみになります。購入時よりも安く売れた場合で手元に現金が残ったとしてもそれは税金の対象にはなりません。
-譲渡益が出る計算式-
譲渡益(売却益)=成約価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除
取得費とは、購入時の仲介手数料や登記費用や購入後にかかったリフォーム費用等のこと譲渡費用とは、売却にかかった費用のことで、仲介手数料や登記費用、契約書に貼る印紙代、更に解体した場合いは解体費用などのこと
特別控除とは、居住用に関する3000万円の特別控除が最も有名ですが、あくまでも持ち主が自宅として使っている場合に限り使うことができる制度で空家になると使えません。
子供が相続する場合、同居している場合は使えるますが、別のところに住んでいる場合は使えません。この場合は「空家の特別控除」を使うことができます。しかし、使うためにはいくつかの条件を満たす必要があります。
次に売却益に税率を掛けて所得税と住民税を算出してみましょう!
所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)
売却益×20%(所得税15%、住民税5%)で計算できます。
所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)
売却益×39%(所得税30%、住民税9%)で計算できます。
実際のところ私が現役時代に取引した事例では、売却したとしても3000万円の特別控除以上の金額で売れることが少ないのが現状でしたし、購入時よりも低い金額で売れた場合が多かったように思います。
所得費が不明な場合もあります。そんな場合は、売却価格の5%を所得費とすることができます。
3.空家の特別控除について
平成28年に税制改正で新たに設けられたのが、「空家の譲渡所得の3000万円特別控除」です。
この税制の概要は、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の住居の用に供していた家屋を相続した相続人が当該家屋(耐震性のない場合は、耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む)又は取り壊し後の土地を譲渡した場合は、当該家屋又は土地の譲渡所得から3000万円を特別控除するというものです。
参考サイト→「国税庁のホームページ」
4.小規模宅地等の特例について
税制には色んな種類の特例がありますが、その中でも最も重要な特例の一つに「小規模宅地等の特例」があります。
この特例についてはこちらを参照して下さい。→「国税庁のホームページ」
実家を売るのは、相続前と相続後のどっちがお得?
私が調べてわかったことは、売るタイミングでお得になる場合があるということでした。
1.居住用不動産を譲渡した時の所得税には2つの特例が存在する
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」と「居住用財産の軽減税率の特例」の2つです。
「居住用の3000万円特別控除」は、自らが居住している家屋とその敷地を譲渡した場合に、譲渡所得の計算上3000万円を控除して計算するというものです。
「居住用の軽減税率」とは、10年以上所有していた居住用不動産を譲渡した場合に、非居住用の通常の税率(所得税15.315%+住民税5%=20.315%、5年超の場合)ではなくて、6000万円までの部分については軽減税率(所得税10.21%+住民税4%=14.21%)の適用が受けられるということでした。
ですから、6.105%も得をするということになります。
但し、条件があって本人が譲渡した場合のみ認められる制度だということ、居住期間の制限はいずれもありませんが、例として1人暮らしの親に相続が発生して、別居している相続人がその物件を相続した後に譲渡しても、「3000万円特別控除」の特例も「軽減税率」も使うことができないということでした。
ですから、この場合は親が生きている間に、譲渡してもらえれば特例が使えたのにということになります。
その一方では、親と10年以上同居していた子供が相続で親の不動産を取得した後に譲渡した場合は、居住要件得を満たしている為「3000万円控除も軽減税率」も両方使うことが出来るということでした。
結論、相続人である子が別居している場合は、親が生きている間に譲渡してもらったほうがお得になるということになります。
尚、国内で税金のことを取り扱うことができるのは、税理士さんだけなので、どうしても知りたい事がある方は、一度税理士さんに直接お尋ねになることをオススメします。
相続して売却する時の注意点
続いて、相続して売却をすることに決まったら、以下の点に注意が必要ですのでしっかりと理解しておいてください。
1.相続登記を済ませる
相続人が相続後に実家を売却するときは、被相続人の名義のままでは売買できないので、新しい名義人(相続人)の名義に相続登記を済ましておかなければ売買できませんので、早めに司法書士に頼んで相続登記は済ませておくようにして下さい。
2.相続登記に必要な書類
・戸籍謄本
被相続人の死亡時のもの
・住民票の除票もしくは戸籍の附票(被相続人の住所が分る書類)
被相続人の死亡時の住所がわかる書類が必要です。死亡した人の住民票は、除票という形で最後の住所地の役所で(本籍の記載のあるもの)を請求しましょう。
なお、除票は死亡後5年が経過すると発行されないことがありますから、その場合には他の書類で代用しなければなりません。 住所を証明するものとしては、戸籍の附票も使えます。戸籍の附票は、死亡時の住所地の役所ではなく、本籍地の役所に請求します。戸籍の附票も年数が経過していれば取れないことがありますから早めに用意しておきましょう。
3.遺言がある場合に必要な書類
被相続人が遺言を残している場合には、遺言に従って相続手続きをしなければなりませんから、必ず添付する必要があります。
・遺言書
公正証書遺言の場合には、そのままの状態で大丈夫なのですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、被相続人の死亡後に家庭裁判所の検認を受けなければなりませんから、検認を申し立てた後、検認済証明の付いた遺言書を用意しておきます。
・遺言執行者の選任審判書謄本
遺言執行者(遺言の内容を実現するために手続き等を行う人)が遺言で指定されていない場合、家庭裁判所で遺言執行者が選任されていれば、選任審判書の謄本が必要になります。
遺言がない場合に必要な書類
被相続人が遺言を残していない場合には、法定相続人が法定相続分どおりに遺産を相続するか、法定相続人全員で遺産分割協議を行って遺産の分け方を決めるかのどちらかになります。そのため、以下のような書類を用意しておく必要があります。
・相続人が誰か分かる戸籍謄本
法定相続人が誰かを確定しなければなりませんから、被相続人が生まれた当時まで(※兄弟姉妹が相続人になる場合には親の代まで)遡って戸籍謄本を取り寄せます。確定した相続人については、生存していることがわかる戸籍謄本(※被相続人の死亡日以降のもの)が必要です。これが結構な時間を要することが多いので、なるべく早くに司法書士に依頼した方がいいです。
・遺産分割協議書
遺産を法定相続分で分ける場合以外は、遺産分割協議書が必要になります。なお、家庭裁判所の調停や審判により遺産分割が行われている場合には、調停調書や審判書謄本が必要になります。
・相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書を作成するときには、間違いなく本人の意思であることを証明するために、実印を押して印鑑証明書を添付するのが一般的な決まりです。そのため、相続人全員の印鑑証明書を用意しておくようにしましょう。
遺産に不動産がある場合に必要となる書類
相続財産の中に不動産がある場合には、法務局で相続登記(不動産の名義変更)が必要です。相続登記を行う場合には、上記の書類に加えて、以下の書類も用意しておきましょう。
・登記簿謄本(登記事項証明書
登記簿謄本は相続登記を申請する際の添付書類ではないですが、相続する不動産を特定するために必要なものですから、予め法務局に取りに行きましょう。
・固定資産評価証明
相続登記の際の登録免許税を計算するために、固定資産評価証明書が必要になります。固定資産評価証明書は、相続人であればその不動産の所在地の市区町村役場で取ることができます。毎年4月1日以降に最新のものが出ますから、なるべく最新のものを取り寄せるようにしましょう。
・親名義人の住民票
相続により不動産を譲り受ける人については、相続登記の申請の際に住民票を添付する必要があります。役所で住民票を取っておきましょう。
・相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議によって不動産を相続する場合や、遺言によって法定相続人以外の第三者が不動産を取得する場合などには、相続人全員の印鑑証明書が必要になります(※遺言執行者が選任されている場合には不要)。
尚、印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものを用意してください。3ヶ月を経過したものは使えません。相続の際に必要になってくる書類はケースバイケースですので、上記以外にも必要な書類が出てくることがあります。予めご了承ください。
詳しいことは、やはり専門家にお尋ねになるのが一番確実だと思います。
相続税の支払い期間について
相続税の支払い期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うことになっています。
詳しいことはこちらを参照して下さい。→「国税庁のホームページ」
まとめ
実家を売却する理由はそれぞれ、大きく分けて2つ、何らかの問題を解決するために売却する場合と、将来の投資のために売却する場合がある。
実家を売らずに賃貸にする場合もありです。リフォームする場合と現状で賃貸する場合がある。
実家に引っ越す選択肢もあります。
実家を売るのは相続前か相続後かその状況に応じて異なる場合がある。
相続税の支払う期限があるので注意する必要があります。